借金の返済が難しくなったとき、「自己破産すれば借金がゼロになる」と考える方も多いでしょう。
たしかに自己破産は、借金を大幅に減らせる強力な制度です。しかし、すべての人が自己破産できるわけではありません。
この記事では、司法書士法人杉山事務所の代表・杉山先生が解説した動画内容をもとに、
「自己破産が認められないケース5選」をわかりやすく整理しました。
この記事を読むことで、
- 自己破産できる条件
 - 認められない主な理由
 - どうすれば手続きを進められるのか
 
が明確にわかります。借金問題で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
自己破産ができるための3つの条件
まず前提として、自己破産が成立するためには次の3つの条件を満たす必要があります。
① 支払い不能の状態であること

「支払い不能」とは、客観的に見て返済を続けることが不可能な状態を指します。
ここでのポイントは、借金の金額だけでは判断されないということです。
たとえば…
・借金が1億円あっても、高収入で返済可能なら認められない
・借金が100万円でも、病気や失業で収入がない場合は認められる場合がある
裁判所は借金額だけでなく、家族構成・生活状況・健康状態などを総合的に判断します。
② 借金の大部分が「非免責債権」に当たらないこと

自己破産では多くの借金が免除されますが、例外として免除されない借金も存在します。
これを「非免責債権(ひめんせきさいけん)」と呼びます。
代表的な非免責債権は以下の通りです。
- 税金(所得税、住民税、国民健康保険料など)
 - 下水道料金
 - 養育費や婚姻費用
 - 交通事故の人身損害賠償請求権
 
たとえば「税金を滞納したから自己破産でなくしたい」と思っても、税金は免除されません。
ただし、その他の借金は免除される場合もあるため、早めに専門家へ相談することが大切です。
③ 免責不許可事由がないこと

「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」とは、裁判所が免除を認めない理由となる行為のことです。
これに当てはまると、自己破産が認められない場合があります。
【必見】自己破産ができない主なケース5選
ここからは、実際に免責不許可事由に該当する代表的な5つのケースを紹介します。
① 財産を隠す行為(財産隠し)
破産者が持つ財産は、債権者への返済にあてるため換金されます。
そのため、財産を隠したり減らしたりする行為はNGです。
例えば以下のような行為は免責不許可となる可能性があります。
・預金を家族名義の口座に移す
・不動産や車を親族に安く売る
・高額な生命保険を隠す
いずれも「財産を隠す意図がある」と判断される行為なので、絶対に避けましょう。

② 借金の原因が浪費やギャンブル
自己破産は「やむを得ない事情」で借金を返せない場合に利用できる制度です。
そのため、ギャンブルや浪費による借金は認められにくい傾向があります。
例としては以下のようなケースです。
・パチンコ・競馬・パチスロなどのギャンブル
・ブランド品や高級車の購入
・株・FX・仮想通貨取引による損失

ただし、生活再建の意志や反省が見られれば、「裁量免責」として認められることもあります。
まずは専門家に相談しましょう。
③ 偏った返済(偏頗弁済)
自己破産では、すべての債権者を平等に扱うことが原則です。
そのため、一部の相手にだけ返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、免責不許可事由になります。
たとえば…
・自己破産を申し立てた後に、親や友人にだけ返済する
・取引先など特定の債権者だけに支払う
気持ちは理解できますが、自己破産手続き中は一切の返済をしてはいけません。
④ 詐欺的な借入
返済の見込みがないのに「返せます」と偽って借金をするなど、虚偽の申告をして借入を行うと詐欺的借入に該当します。
・多額の借金を隠して新たな借金をする
・無収入なのに返済できると嘘をつく
悪質なケースでは、刑事事件(詐欺罪)に発展する可能性もあります。絶対に避けましょう。

⑤ 裁判所に協力しない
自己破産の手続きでは、裁判所の指示や質問に誠実に対応する必要があります。
次のような行為があると免責が認められないことがあります。
・審尋(しんじん)に無断で欠席する
・裁判官に嘘の説明をする
破産手続きに関わる司法書士・弁護士・裁判所には、誠実に対応することが何よりも大切です。
そのほかの免責不許可事由
上記以外にも、次のようなケースがあります。
・クレジットカードの現金化を行った
・過去7年以内に免責を受けたことがある
・管財人の業務を妨害した
これらに該当する場合でも、「裁量免責」によって免責が認められる可能性があります。
そのため、該当するかもしれない方もあきらめず、まずは専門家へ相談しましょう。
まとめ|自己破産は「最後の手段」だからこそ専門家に相談を
自己破産は、借金で苦しむ人が人生を立て直すための強力な制度です。
ただし、全員が自動的に認められるわけではありません。
- 財産を隠す
 - ギャンブルや浪費による借金
 - 偏った返済
 - 嘘の申告
 - 裁判所への不誠実な対応
 
こうした行為があると、免責が認められない場合があります。
一方で、誠実に手続きを行い、司法書士や弁護士に相談すれば、多くのケースで免責が許可されるのも事実です。
専門家に依頼すれば、取り立てのストップや一時的な返済保留などのサポートも受けられます。
司法書士法人杉山事務所では、自己破産や債務整理に関する無料相談を受け付けています。
ひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

