身近な人が亡くなったあと、避けて通れないのが「遺産相続」の手続きです。
「何から始めたらいいの?」「家族や兄弟と揉めたらどうしよう…」と、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
相続手続きは、時に家族間のトラブルに発展することもある、デリケートな問題です。
しかし、事前に流れを知っておくだけでも、安心して対応できるようになります。
この記事では、相続の手続きを進めるうえで知っておきたい5つの基本ステップをわかりやすく解説します。
「今まさに相続手続きで迷っている方」や「いつかに備えて知っておきたい方」は、ぜひ参考にしてください。
遺産相続の手続きは主にこの5ステップとなります。
- 遺言書の確認
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議の開始
- 相続方法の決定
それぞれ、順番に見ていきましょう。
ステップ1:遺言書の確認

遺言書があるかないかで、その後の手続きの行方が大きく変わってきます。
遺産相続の第一歩として、「遺言書の有無の確認」をしてください。
なぜ最初に確認が必要なの?
例えば、「遺言書がない」と思って遺産分割協議を進めていたところ、後から遺言書が見つかった場合。
そのときは、これまで進めてきた話し合いを最初からやり直すことになり、時間や労力が無駄になってしまうことがあります。
遺言書は、家の中に保管されていることもありますが、比較的遺産が多い場合は、公証役場という公的機関に保管されていることも多いです。
念のため、公証役場に遺言書の有無を確認してみましょう。
(※)公証役場とは 法務大臣に任命された公証人が、契約書や遺言書などを作成する公的な機関です。
無断で開封すると、5万円以下の過料(罰金)が科されることがあります。
遺言書の開封は、家族が家庭裁判所に「検認」という手続きを申し立てて行います。
(※)検認とは 家庭裁判所が遺言書の形状や内容を確認し、偽造や改ざんがないかを調べる手続きです。 遺言の有効・無効を判断するものではありません
検認を申し立てると、家庭裁判所から相続人に検認の期日調整の連絡があり、決められた日に相続人全員が出席して遺言書の開封と確認を行います。
遺言書がある場合、基本的にはその内容に従って相続が進みます。
ただし、相続人全員が同意すれば、遺言書があっても遺産分割協議の内容で分けることも可能です。
ステップ2:相続人の調査

遺言書がない場合は、遺産分割協議を進めることになります。
そのためにまず大切なのは、「相続人が誰で、何人いるのか」を正確に把握することです。
遺産分割協議をした後に、
- 前妻との子どもがいた
- 家族に知られず認知した子がいた
などのことが分かると、これまでの話し合いや決定がすべてやり直しになる場合があります。
相続人を調査するには、故人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍を集めて確認する必要があります。
ただ、この調査は非常に手間がかかり、複雑なことも多いです。
もし自分で行うのが難しかったり、時間がない場合は、司法書士や行政書士に相談すると安心です。
ステップ3:遺産の把握

次は、相続財産を正確に把握するステップです。
遺産には、預貯金・不動産・車などの「プラスの財産」だけでなく、借金などの「マイナスの財産」も含まれます。
たとえば、1億円の不動産があっても借金が2億円あれば、相続すればマイナスになってしまいます。
このような場合は「相続放棄」の制度を使う選択肢もあります(※後述します)。
遺産の中で特に問題になりやすいのが「家と土地」です。
例えば、父親が亡くなり、妻・長男・次男が相続人となったケース。
妻が土地、長男が家、次男が車を相続するとなると、次男が不満を抱くなど、分け方によっては争いの火種になることも。
こうした場合は、不動産などを売却して現金で分ける「換価分割」という方法もあります。
一方、家を共有する「共有分割」は、売却や賃貸時に意見が食い違ってトラブルになることも多いため注意が必要です。
不動産のように分けにくい財産がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
ステップ4:遺産分割協議

相続人が確定し、遺産の内容も把握できたら、「誰が・何を・どれくらい相続するか」を決める遺産分割協議を行います。
協議は、全員で集まって話し合うのが理想ですが、遺産が少ない場合などは電話やメールで合意することも可能です。
分け方は相続人全員の同意があれば自由で、「すべて長男が相続する」などの決定もできます。
ただし、話し合いがまとまらない場合は注意が必要です。
💡ワンポイント解説:話し合いで決まらない場合は?
・遺産分割調停
家庭裁判所で、第三者(調停委員)を交えて話し合いを行います。
・遺産分割審判
調停でも合意できなかった場合、裁判所が遺産の分け方を決定します。
相続人間で揉めると、手続きが長期化することもあるため、早めに司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
ステップ5:相続放棄・限定承認も検討を

遺産の相続方法には、大きく分けて次の3つがあります。
1.単純承認(特別な手続き不要)
すべての財産を引き継ぐ方法です。
プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含めて、すべてをそのまま相続します。
ただし、借金が多い場合は慎重な判断が必要です。
財産がプラスになる場合は、この方法でも問題ありません。
2.相続放棄(借金を引き継ぎたくない場合)
最初から相続人でなかったことにする制度です。
借金などマイナスの財産が多いときは、この制度を使って相続自体を放棄することができます。
相続があったことを知ってから3ヶ月以内に手続きしなければなりません。
家庭裁判所へ「相続放棄」の申し立てが必要です。

3.限定承認(慎重に判断したいとき)
プラスの財産の範囲内で借金を返済し、それでも残れば相続できる方法です。
- 遺産に借金があるかどうか不明なときに使われます。
- プラスの財産を超えてまで借金を背負うリスクを避けられます。
- こちらも相続があったことを知ってから3ヶ月以内に手続きが必要です。
- 相続人全員の合意が必要です。1人だけの判断では手続きできません。

相続放棄・限定承認は“期限”に要注意!
相続放棄・限定承認には共通して、
「相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内」という厳しい期限があります。
この期間を過ぎてしまうと、自動的に「単純承認」したとみなされ、借金まで相続してしまう可能性があるので要注意です。
少しでも不安がある方は、早めに司法書士などの専門家へご相談ください。
まとめ
今回は、相続手続きの基本的な流れを解説しました。

- 遺言書の確認:まず最初に!勝手に開封せず、家庭裁判所で検認。
- 相続人の調査:故人の戸籍をさかのぼって、相続人を確定。
- 相続財産の調査:プラスの財産・借金の両方をチェック。
- 遺産分割協議:相続人全員の同意が必要。
- 相続方法の決定:相続放棄・限定承認は3ヶ月以内に。期限を過ぎると自動的に単純承認となり、借金も引き継ぐ可能性があります。
消滅時効のように「期限を過ぎれば権利がなくなる」のが法律の世界。相続も同様に、期限を守ることがとても重要です。
ご不安な場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
杉山事務所でもご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

