自己破産による職業制限について

自己破産に対して良いイメージを持たれる方はあまりおられないでしょう。「自己破産」をするにあたって、以下のような心配をされる方も多いと聞きます。
△ 自己破産したことが戸籍や住民票に記載されるのではないか
△ 選挙権や被選挙権(これを公民権と言います)が無くなるのではないか
△ 服や家財道具を「差押え」され使えなくなるのではないか
△ 国家試験を受験できなくなるのではないか
しかし、これらはすべて誤りです。
戸籍や住民票に「破産」したことは記載されませんし、公民権もなくなりません。日常生活を送るために必要な家財道具まで「差押え」を受ける事もありませんし、国家試験を受ける事を制限されもしません。
むしろ、自己破産は今までの借金生活から脱却し、新しい生活を始めるための手続きであると言えます。
ところが、自己破産にもマイナス要素があります。それが資格制限です。
自己破産による資格制限
<1> 卸売業、貸金業、警備員、警備業、建設業(一般建設業、特定建設業)、証券業、証券取引外務員、生命保険募集人、宅地建物取引業、宅地建物取引主任者、マンション管理業、廃棄物処理業(一般、産業)、風俗営業、風俗営業の営業所管理者、旅行業、旅行業務取扱主任者
※ ~業というのは、~業を営む、つまり経営者となることです。
<2> 行政書士、公証人、公認会計士、社会保険労務士、司法書士、税理士、宅地建物取引士、中小企業診断士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、弁護士など
※ 「士業」と言われる国家資格を有する職業です。
<3> 株式会社、有限会社の取締役、合名会社、合資会社の社員、特定非営利活動法人(NPO)の役員、後見人、遺言執行者など
上記以外にも、自己破産手続をした場合における職業の制限が規定されています。しかし、自己破産したからといってこれらの職業に一生就けない訳ではなく、あくまで一時的なものです。その期間というのは「破産手続開始決定」から「免責許可決定」の確定までの数ヶ月間となるのが一般的です。
破産手続開始から免責許可までが資格制限の期間です
自己破産は、専門家である弁護士や司法書士に依頼して以下のとおりに進みます。
1)専門家への依頼
2)申立準備
3)「自己破産の申立て」
4)「破産手続開始決定」
5)破産管財人の選任、債務者審尋、債権者集会、破産廃止決定などの諸手続
6)「免責許可決定」(借金に対する責任を免れます)
7)免責許可決定の確定
このうち4~7までの期間について資格制限が設けられています。
さて資格制限は、「破産法」に定められているのではなく、それぞれの職業、資格に関する法律に定められていて、その数は100以上にのぼります。条文上「破産者で復権を得ないもの」などと規定されていますが、破産手続開始決定を受けた者を「破産者」、免責の許可を得ることを「復権」といい、つまりは、「破産手続開始決定を受けた者のうち免責決定が確定していない者」という意味になります。
破産手続開始時に既にその職業に就いている場合はどうなるの?
以下の3種類があります。
1、 破産手続開始決定によって、復権するまでその仕事に就くことができなくなるもの。(警備員、宅地建物取引主任者など)
2、 破産手続き開始決定があっても、登録の取消手続きが取られない限りはその職を継続できるもの(生命保険募集人など)
3、 破産手続き開始によってその地位を失うが、復権を待つ事無く再び選任されればその地位に戻れるもの(株式会社の取締役など)
資格制限がデメリットになる人は少ない!?
資格制限が自己破産手続を躊躇する理由になる人は実はそんなに多くないのかもしれません。また、該当するとしても法的には復権できることが定められていますので、大きなダメージとはならない人も多くいることでしょう。自己破産手続は、非常に複雑で専門知識も要します。手続に伴って起こる変化についても具体的には専門家のアドバイスが必要です。