自己破産手続きでよく聞く『免責不許可事由』とは?

破産は借金が返せなくなったときに、裁判所の決定のもと法的に処理し、「借金苦」の生活から立ち直る一歩を踏み出すのに大事な制度です。
総務省の統計によると、1990年代のバブル崩壊までの自己破産件数は、年間約1万1000件。1991年からは一直線に増え、2003年に約25万2000件(法人含む)とピークになりました。それ以降減りつつありますが、それでも年間5〜10万件はあります。
破産の申し立ては「免責許可」を得るため
借金をなくすために自己破産の申し立てをするのですが、自己破産申し立てと同時に免責許可の申し立てをおこないます。免責許可とは、「返済しなくても良いです」という裁判所の決定で、免責してもらえないと借金が残るため、破産しても借金(債務)の支払い義務から逃れることができなくなります。
破産法に詳しく書かれています
つまり、破産申立において免責が許可されるかどうかがきわめて重要なのです。免責が不許可になる理由のことを「免責不許可事由」と言います。破産法252条1項に詳しく書かれています。
具体的な事案例で説明しましょう。
1破産申し立て前に自分の預金や不動産を家族名義に移してはいけません
252条1項1号の「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は、属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと」にあてはまる可能性があります。
「破産財団」とは、破産者が破産手続き開始決定の時に持っていた財産で形成されるもので、破産者名義の預金や不動産などを指します。それを家族や他人などの名義に変えることで債権者への配当が減り、債権者が不利益を被るうえ、破産者は事実上自己財産を保有し続けることができるため許されないのです。
2クレジットで商品を買い、安く転売するのはNG
252条1項2号の「破産手続きの開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れ、これを著しく不利益な条件で処分したこと」にあてはまる可能性があります。
「遅延させる目的で」とか「著しく」とか、いくつか条件が付くのですが、意図せずしてしまった場合でも要注意です。
3業者からの債務は破産によって支払わないようにするのにもかかわらず、親族や友人に借りている分は先に返済してしまう
252条1項3号の「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属さず、又は、その方法もしくは時期が債務者の義務に属さないものをしたこと」に当たる可能性があります。
4ギャンブル、高額貴金属購入、贅沢飲食、風俗店利用などNG
パチンコ、競輪、競艇、競馬などのギャンブルや例示した行為は、252条1項4号の「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」に当たります。
5債務状況や収入、職業などを偽って借り入れた行為はNGです
252条1項5号の「破産手続き開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続き開始の決定があった日までの間に、破産手続き開始の原因となる事実があるのを知りながら、当該事実がないと信じ込ませるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得すること」にあたる可能性があります。
6財産に関する帳簿を隠したり、偽造したりするのはもってのほか
252条1項6号の「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、または変造したこと」にあたります。
7嘘の債権者名簿を裁判所に提出するのはNG
252条1項7号の「虚偽の債権者名簿を提出したこと」にあたります。免責を認められるかどうかに関係なく、これはいけませんね。
8裁判所の調査に対して嘘の説明をするような非協力的姿勢はやめましょう
252条1項8号の「破産手続きにおいて裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと」ととられる可能性があります。
9破産管財人等の職務を妨害するのはNG
財産の引き渡しを拒むなどの行為は、252条1項9号の「不正の手段により破産管財人、保全管理人の職務を妨害したこと」とみなされる可能性があります。
10過去の免責許可から7年以内に再び免責許可を申し立てることもNG
252条1項10号以下に書かれています。
裁判官の判断に委ねられる要素は大きいです
上記例のような免責不許可事由に当たる場合でも、免責許可を与えるかどうかは、裁判官の判断(裁量といいます)に委ねられていて、本人の反省や更正の状況などを総合的に判断することになっています。
また、到底免責許可できない場合でも、大阪地裁の場合は「免責観察」として破産管財人が免責を認めることができないか調査する運用を行っています。
まずは専門家である司法書士に相談を
免責許可を申請して認められなかったケースはほとんどありません。
「免責が認められないかもしれない」とためらわずに司法書士に相談すれば、その時点で取り立ては止まりますし、不安な方は一度専門家である司法書士に相談することをお勧めします。