自宅の任意売却は、自己破産前にするべき?

自己破産を考えはじめたあなたは「どうせ自宅を取り上げられてしまうんだったらジタバタしなくていいや」と思っていませんか?
自宅を手放すにしても自己破産をするにしても、最善の方法が存在します。投げやりにならないで専門家である司法書士のアドバイスを受けながら検討してみましょう。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産は、裁判所の決定によってすべての借入金の返済を免除される手続です。
しかし一方で、デメリットもあります。具体的なものは以下のとおりです。
1一定の財産は処分しなければならない可能性があります。
2自己破産したあと、5〜7年は新たなローンは組むことが難しくなります。
3特定の資格を必要とする職業(保険募集、弁護士、税理士、宅建業など)には、手続が終了するまでは就けません。
4連帯保証人に迷惑がかかる恐れがあります(連帯保証人は主債務者が自己破産しても返済義務を免責されないので、連帯保証人も自己破産や個人再生、任意整理をせざるを得なくなる事態が起きることがあります)。
自己破産に伴って自宅を手放すときは任意売却を考えましょう
住宅ローンを支払い中の方は、自己破産手続にあたって自宅を失うことになります。自宅を売却する方法は、「競売」と「任意売却」の2通りが考えられます。「任意売却」とは、競売によらず不動産業者を仲介人として売却することを指します。通常の売却と違うのは、売買代金で住宅ローンを完済できないところです。
任意売却にはいくつかのメリットがあります。競売と比較しながら見ていきましょう。
競売 | 任意売却 |
売却金額が低い | 売却金額が高い |
退去時期が不明 | 退去時期が明確に決定 |
引越しは自己資金で行う | 引越し代金の一部が売買代金から捻出できる可能性がある |
差押のある滞納税金は、抵当権に優先しない限り売却代金からは支払われない | 差押のある滞納税金についても売却代金から一部支払われる可能性がある |
売却代金が高いということは、住宅ローン債権者にとっても返済される金額が多くなるため任意売却に応じるのであり、また任意売却を希望するのです。返済金額が増えれば保証人が、ローン残を支払っていく場合に負担が少なくなります。
任意売却にすれば、携わるすべての人にとってプラスに働くのです(滞納税金が多い場合には、任意売却がうまく進まない可能性もあります)。
1自己破産申立前の任意売却と申立後の任意売却
任意売却は、自己破産申立をする前と申し立てた後どちらで行えばよいのでしょうか?
自己破産申立前の任意売却は、オーバーローン状態(住宅の時価よりもローン残高のほうが高く、住宅に財産価値がない状態)と判断できる一定の要件の下に行うべきです。そうでない限り申立前に任意売却はするべきではありません。なぜなら裁判所の基準に従ってオーバーローンと判断できないものについては「管財事件」として扱うべきであり、売却価格設定やその代金の利用については自ら判断すべきものではありません。一方、住宅がオーバーローン状態でそのほかに財産がほとんどなければ、「同時廃止」という簡易な手続で破産処理がなされます。その場合には、自己破産手続の前後を問わず任意売却が出来るのです。しかし、各地の裁判所によって取り扱いが異なることも多く、任意売却を事前にするか否かの判断は自己破産手続に精通している地元の専門家に相談することが必要となります。